雨が急に降ってきました。どうやらとうり雨らしい。しのは、窓辺で頬づえをつきながら雨脚を眺めていました。
「しの、なにしているの」母親の声にしのは、我にかえり答えました。
「雨が、さっきから一生懸命に降っている。」
「どんな顔をして降っているの」
「まじめな顔をしているよ」
これを聞いた母親は、また、しののわけのわからない言動の相手をすることをやめました。
黙って雨を眺めていたしのは、急に立ち上がり、長靴を履き外に出て行きました。
「しの、どこへいくの?」
「どこへも行かないよ。チョット外にでるだけ。」
しのは、笠をさし、雨どいの下に立って一人でぶつぶつ何か言っておりました。
雨が激しく降る夕べ
壊れた雨樋の下に
笠をさして立つ
バンバンバン
太鼓の音がする
なんだか急に
人懐かしくなってきた
しのは、雨が小降りになるまで、心を空にしたまま、太鼓の音を聞いていたのです。
(トップへ)
|