竹馬(ちくば)の夏               作 篠原富美子


 日本の夏を象徴するような、蒸し暑い日である。
 村田篤は、冷房が人の発する熱量を冷やしきれない満員の地下鉄から降り、阿佐ヶ谷の街を、
 上着を片手に持ちながらJR阿佐ヶ谷駅前の商店街に向かう。
 街並みは、篤が住んでいた頃とは、路地こそ変わっていないが、大きな屋敷があっただろう処は、
 いくつかの似たような形をした建売住宅などに変貌している。

 夏の陽は、まだ高く(飲み屋に行くのには少し早いなー)と、区役所横の中杉通りを外して、
 住宅街を歩き小さな公園を見つけてタバコに火をつける。
 篤にとって阿佐ヶ谷は、学生時代に住んでいた街であり、卒業後は、故郷に近い関西に工場と研究所を
 持つ会社に勤めていた。
 工場統合による人事異動で、東京本社勤務になり、妻と子供を関西に残し、
 阿佐ヶ谷と荻窪駅の中間に住まいを構え、一人の生活も慣れてきた頃であった。
 通常は、荻窪駅で下車するが、その日は、学生時代の友人である松本孝雄との約束で「南阿佐ヶ谷駅」で
 下車する。
 篤は、大学一年のときは、学校付近の下宿屋に下宿していたが、下宿人同士のマージャン付き合いに
 嫌気がさしたころ、松本の紹介で阿佐ヶ谷にアパートを借りた。
 卒業後も、篤が出張で東京に来たときなどは、互いに都合がつく限り、都心で酒を飲んでいたが、
 郊外の阿佐ヶ谷で飲むことは無かった。
 (おっちゃんは、未だ営業しているのだ。おかあちゃんは元気なのかなー)
 これからの再会を思いつつ、眺めるともなしに公園で遊ぶ母子を見ていた。

 「おじさん、ボール取って」と、男の子の声がする。
 篤は、我にかえり、足元に転がり込んだ小さなゴムボールを拾い、駆け寄る少年に渡すと、
 「ありがとう」少年は、ボールを受け取り、一緒に駆け寄ったママらしきタンクトップ姿の女性の
 手にすがる。
 女性が軽く会釈すると、篤は、彼女の胸元が広く開いた先の隠された膨みの裾野が目に入る。
 篤は、急いで目を逸らすと、ピンクのマニキアをしたサンダル履きの素足の爪が目に留まる。
 (きれいな人だなー。これが将来の荻窪婦人かー)
 篤は、さりげなくその場を去るが、約束の「おっちゃん」に向う途中も、なにやら懐かしく、
 親しみを覚えていた。
 (最近にない、感覚だなー、まずい!飲んで払い落とそう)
 篤は、おっちゃんの暖簾が見えると、足早になった。  

 篤が、おっちゃんの暖簾をくぐると、「いらっしゃい」と、昔と変らない声が返ってきた。
 「久しぶり。まだ営業しているのだ。懐かしいなー」
 「やー、お待ちしていましたよ。昨日、松本さんから『篤が来る。いいも仕入れておけよ』と、
 連絡がありました」
 篤は、L字型のカウンターの一角に席を取りながら、
 「おっちゃんもおかーちゃんも、あまり歳をとってないね」
 「頭を見てくれよ。白いものがめっきり多くなって・・・。昔のようにビールだね」と、
 おっちゃんは、付け出しとコップを、篤の前に並べた。
 「松本は、相変わらず寄るのか」
 「時々、松本さんの話では、随分偉くなったそうですね」
 「いや、技術馬鹿への定年前の褒美のようなものだ。現場で、半田ごてを握っている方が楽だ」
 「そんなものですかねー。わしらにはわからん」
 表のドアがあいて、松本が入ってきた。
 二人が隣同士に座り、ビールで乾杯していると、
 「あまり、良いものが無くー。近海の魚を少し・・・」
 「肴は、何でもいいよ。適当に見繕ってくれ。篤は、最後に味噌汁があれば満足するはずだ。
 おかあちゃん頼むね。」
 「はい。珍客ですからね。昔どおりの味で」と、他の客に酒を出していたおかあちゃんが、答えた。
 篤は、学生時代にはこの酒場で焼酎数杯を飲み、握り飯か、お茶づけで食事をし、
 おかあちゃんの作る味噌汁で閉めていた。
 二人は、ビールを飲みながら、近況を語り合う。
 「僕らも、定年まであと数年だが、君はどうするつもりだ」と篤の問に松本は
 「まだ、考えていない。子会社の役員と言う話もあるが迷っているのだ」
 「ゆっくり考えればいいよ。ところで家族は元気か?」
 「うん。元気だ。しかしな、娘の奴、嫁にいって、孫をつれて帰ってきちゃった。」
 「そうかー。それは大変だな。若い者は何とかするよ」
 「ああ、そうだ。女房が『君と会うから飯はいいよ』と言ったら、会いたいとさ」
 「奥さん、元気か」
 「日曜日でも、来いよ。肉ジャガとキンピラくらいは用意させておくよ」
 「君のお母さんの肉ジャガ懐かしいなー」
 篤は、趣味は、洋画やクラシック音楽など洋風なものであるが、食べ物だけは、
 おふくろの味であった。学生時代は、松本の母親が作る家庭料理を好んで食べた。
 「女房は、母ほどでもないが、味は似てきたよ」
 「うん。奥さんによろしく」
 「まあ、僕もここには時々くるが、君も顔をだせ。天沼なら歩いて帰られるだろ」
 「ああ、学生時代のように、ここで時々飲むことにするよ」
 二人は、電車に乗らないで帰れる気楽さから、閉店時間近くまで飲んだ。

 篤は、早め目に帰宅できる日は、南阿佐ヶ谷で下車し、先日の公園で一服して、おっちゃんで飲むよう
 になった。真昼の太陽が暑くても、夕暮れになれば秋風を感じる日、公園に行くと、
 終わりかけた百日紅(さるすべり)の花の向こうで、母子が二人で小さなブランコに載っていた。
 母親は、赤いTシャッツ姿で、子供の動きに合わせてブランコを揺らすが、
 「ママの真似しちゃだめよ」と、言いながら、時々思い切り高く漕ぎあげる。
 篤の目は、知らず知らずのうちに、彼女のスカートの間から見え隠れする太ももに移る。
  単身赴任して数ヶ月になり、月1回ほどは家に帰るが、熟年夫婦であるから熱いものは、
 それほどない。それだのに、篤は、何処かから熱いものが沸いてくるような不思議な心持になる。
 (僕にもまだこんな気持ちになることもあるのだ)
 篤は、数年後に定年になる年齢であり、社会的地位からすれば、若者のように気軽に声をかけることも
 できない。タバコを1本吸ってその場を去る。
 背中の方から「さー、おばーちゃんの処に帰りましょう」と子共に話しかける声が聞こえる。

 おっちゃんで、そろそろ帰ろうと思っていたら、ドアが開き、女性が入ってきた。
 「いらっしゃい」
 女性は、篤の一つ隣に席とり、「枝まめとビールね。おっちゃん、父には・・・」と、
 唇に人差し指をあてる。
 「判ってます。美香ちゃんとの約束ですから」
 「父は出張で居ないし、母は孫と寝たから来たの」と、横を見て、篤に気づく。
 「あら!さっき、公園で・・・」
 篤は、彼女の入って来た時に、既に気づいていたが、
 「はい。どうも・・・」と、口をにごす。
 「時々、公園で見かけますね」
 「ええ、可愛いお子さんですね」篤は、潮汁を飲みながら、彼女のおいしそうにビールを飲む横顔を見る。
 そのしぐさは、公園での母親ではなく、円熟した女性としての艶やかさが漂っていた。

 しかし、その横顔は何処かで見たような気がするが、思いだせない。
 (旦那はどんな男なのだろう)
 篤は、彼女のビールが空になるまで、おっちゃんと四方山話をし、勘定をして出る。

 松本美香は、勘定をしようと
 「ご馳走さま。幾ら?」
 「はい、待ってください。」とおかーちゃんの返事に、おっちゃんが
 「美香ちゃん、あの人誰か知らないの? お父さんの友人の篤さんだよ。」
 「知らなかった。会ったことも無いから」
 「篤さんも気づいてないようなので、あえて言わなかった。美香ちゃんとの約束だからね」
 「最近のお客様かと思った。でも、公園で見かけることもあるの」
 「篤さん、まぶしそうに美香ちゃんを、見ていたよ」
 「そー。変な女と思ったのでしょう」
 「それはどうかな。美香ちゃん、いつかはお父さんにばれちゃうよ」
 「その時はそのときね。」
 美香は遅かれ早かれ父に知られることを覚悟した。
 美香は、両親の反対を押し切って、結婚し、数ヶ月前に別れて実家に戻り、
 両親には、「しばらく、おとなしくしていなさい」と、言われていた。

 篤は、会議・会議の連続に疲労を感じながら地下鉄を降りる。
 このまま帰っても寝付けないだろうと思い、おっちゃんに寄り、飲んででいると、美香が入ってきて、
 立ったまま「おっちゃん、ビールね。それに、冷奴」と言い、おっちゃんに目配せをしながら
 「こんばんは。隣に座ってもよろしいですか」と、気安く話かけてくる。
 篤は、「おや!」と、思いながら「どうぞ」と彼女用の椅子を後ろにずらす。
 美香は、「村田さんですよね。おっちゃんから聞きましたよ。
 学生時代にはここの常連だったのですって?」
 「はい。こんど東京勤務になったので、荻窪に住むようにしました」
 「単身赴任ですってね。私は子持ちのバツイチです。よろしくお願いします」
 「こちらこそ」
 「おっちゃんは『貴方なら親しくなっても大丈夫』と、言っていましたよ。だから・・」
 美香は、微笑んで、篤のコップに自分のビールを注いだ。
 「おっちゃん、そんなことまで話したのか?」と、言う。おっちゃんは
 「この前、美香ちゃんが、篤さんが帰った後にいろいろ聞くからついつい・・・」と、
 美香に目で合図する。
 篤は、嬉しくもあったが、少し戸惑いを感じた。
 東京にきて、仕事関係以外の人との会話も少なくなっており、
 まして、娘と変わらない歳恰好の女性との会話である。
 最初は、言葉を捜しながらであったが、酔いの後押しもあって、しだいに打ち解けてきた。
 自分からは、声をかけたくても出来なかったのに、彼女の方からである。
 (どうして急に変わったのだろう)と、おっちゃんと美香ちゃんと呼ばれる女性を見比べた。
 しかし、屈託無く明るく話をする彼女につられて、いつになく饒舌になっていた。

 「そろそろ、私は帰ります」と美香が勘定を請求すると、篤はちょっとためらったが、
 思い切って、「全部僕と一緒にしてください」と、彼女を制した。
 「それでは、あまり・・・」
 「女性と一緒に飲んで、とても楽しかったので、それに知り合いになった記念に、今日は僕が・・」
 美香は、助けを求めるように、「おっちゃん、どうしましょう」と、尋ねる。
 「今日は、甘えておきな。篤さんの折角の好意だ」
 その一言で、「そーね。ご馳走さま、お言葉に甘えます」と、ほんのりと赤くなった笑顔で会釈する。

 二人は、表に出ると、秋風が酔った頬を撫でた。
 「少し、散歩しますか?」
 「ええ、子供はもう寝静まっているし・・」
 意外に素直な返事に、篤は驚きながら、小さな公園に向かう。
 篤は、(遠い昔もこんなことがあったなー)と、学生時代のガールフレンドとの事を思いだす。
 しかし、篤は、こんな情景のときに話す言葉は、思い出せず黙っていると、
 美香は、「この辺も、個人商店が少なくなったの」などと、話題を探していた。

 いつもタバコを吸うベンチに腰を下ろし、しばらくの沈黙があり、篤は、美香の背中に腕を回し、
 彼女を抱えるように寄せ、Tシャッツの上から、美香のふっくらとした胸に手を当て、
 やわらかい塊まりをさぐる。 美香は、しばらく素直に受け止めていた。
 篤は、高まる興奮を抑えきれず、目を閉じている顔に、唇を重ねようとすると、美香は、固く唇を閉ざし、
 「だめ、貴方には奥様がいる。そして父に・・・」と、目をパッチリ開け、篤の腕をはらった。
 篤は、はっとし、股間の高ぶる興奮を沈めようと、「ふー」と深呼吸し、
 「ごめん! お父さんがそんなに怖いの?」
 「はい、父の反対を押し切って結婚し、今は、母子二人、父に食べさせて貰っているから」

 美香は、何事もなかったように、少し乱れた衣服を直し、「帰りましょう」と、
 立ち上がり篤に手を差し出す。
 篤は、昼間みる男の子のように美香の手にすがって立ち上がり、黙って歩き出す。
 美香は、屈託もなく、「今日は、ご馳走さまでした。またおっちゃんでお会いしましょう」と、
 くるりと背を向けて歩き出した。
 篤は、答える言葉もなく、美香の背中を見送り、手に残る胸の感触を一振りする。
 (女の気持ちは、わからないなー。帰ったら、罪滅ぼしに妻に電話しよう)

 刷毛で塗ったようなどんよりとした日曜日の朝である。単身生活にも慣れ、家の掃除や洗濯を終え、
  コヒーを飲んでいると、電話が鳴る。松本からであった。
 「今晩は暇か?」
 「これと言った用事はない」
 「女房が、『家で食事でもしよう』 と言っている」
 「うんー。迷惑でないか?」
 「水臭いこと言うな。6時ごろ来いよ。待っている」
 松本は、篤の返事を待たずに、電話を切った。(相変わらず、強引だなー)
 篤は、温くなったコヒーを一口のみ、パソコンにむかい、昨日自宅に転送しておいたかっての部下の
 特許出願書の添削をした。共同出願者として、篤の名が書かれているが、削除すると同時に、
 「発明を二個に分けることも考えたらどうだろ」と、注釈の吹き出しを付け加えた。

 松本孝雄と篤は、学生時代はゼミも同じで、実験などのときは、いつも松本が中心であったが、
 機密な性格の篤にしてみれば頼もしいライバルであった。二人は、授業が忙しくてマージャンなどの
 遊びをしなく、時間の余裕があれば映画鑑賞を楽しんだ。
 そして篤が、阿佐ヶ谷に越してきてからは、時折、松本の母親の作る夕食をご馳走になった。

 篤は、夕方、駅前で、ワインと果物を買って松本の家に向い、玄関のベルを鳴らす。
 「はーい。お待ちしておりました」と、奥さんの迎えを得る。居間のテーブルには、
 既に宴会の用意がされてあり、松本は、雑誌を読んでいた。
 「お!良く来てくれた。そこに座れ、始めよう」と、ビール瓶に手をかけた。
 「まず、仏様にだけ、お参りさせてくれ」
 篤は、奥さんの案内で仏壇に線香をあげた。

 「美香、篤さんよ、降りていらっしゃい」と、奥さんが声をかけると、しばらくして男の子が顔をだした。
 篤は、「あ!あの子だ」と一瞬目を疑った。「挨拶は?」の声に
 「いらっしゃい」と、松本と奥さんの間に座る。
 「ママは?」
 「後から行くからって言っていたよ」
 奥さんは、子供にジュースを注ぎながら「お化粧でもしているのでしょう。はじめましょう」と、
 ビールの入ったコップを目の前にかざす。
 「再会を祝して、乾杯!」と、松本の合図で会が始まる。

 篤は、昔と余り変わらない庭先の植木を見ながら、古い井戸と離れの無いのに気づき、
 「おい、離れは売ったのか」
 「あー、相続税のためにな、庭も小さくなった」
 「来るとき、一瞬、道を間違えたと思った。桜の木の屋敷が無くなっている」
 「この辺も家並みが変わったからな、離れも隣の屋敷と一緒になってマンションさ」

 しばらく、とりとめのない話をしていると、
 階段を下りる音と同時に、美香が顔をだし、「いらっしゃいませ」と、挨拶しながら、篤に目配せをする。
 「お邪魔しておいります」
 松本は、娘と、孫を篤に簡単に紹介すと、美香は、「始めまして・・」と会釈して、篤の隣に座る。
 (松本の娘だったのかー )篤は、彼女の先日の冷静な態度に感謝した。

 男の子が、松本の膝に乗ると、「篤、孫はいいものだよ。君はまだか?」
 「あー。息子は、作り方を知らないらしい。それに、娘はまだ一人ものだから」
 「君の性格に似て、綿密な計画でもしているのだろう?」
 「さー、でも、僕は子作りには計画無しだった。二三回、妻の上で「うんー」言ったら出来ちゃった」
 「子作りなんてそんなもんだ」
 「南風の強い日に、めしべがおしべになびいただけ」
 「あら、篤さんから、こんな言葉を聞くのは、初めてね」
 「こいつも、社会に揉まれて、冗談を言えるようになった。あ、は、は・・・」
 篤も美香もつられて笑った。
 美香は、「父の親友と知りながら、からかってごめんなさい」と、言いたかったが、
 黙ってビールを注ぐ。
 「ありがとう」と、(松本に話してもかまわないよ)の、意味を込めて言った。  

 松本は、篤の持参したワインの栓を抜きながら、
 「美香も君の"竹馬(ちくば)の友"だ。君は、若い頃には、男女問わず、親しくなると、
 『僕の友は、誰でも、名前のとおり竹馬の友だ』と言っていたなー」
 「そんなこともあったなー」
 「村田でなく篤と呼ぶのは、竹馬の友だからだ。周りの女の子が、はじめだった」
 「お母さんも、篤さんの竹馬の友だったの?」
 「そうよ、そして、少し泣かされたの、最も私だけじゃないけどね」
 美香は、「そうなの?」と篤に顔をむけた。篤は、
 「いや、僕は、女性を愛しても、悲しませたことないよ」
 「そうだよ。男は単純だから、好きな女は、ただ一人、だが時々目移りするけどな」と、松本は笑った。
 奥さんは、ワインを注ぎながら「まーまー、今日からは、親子三人とも竹馬の友ね。乾杯しましょう」
 「乾杯!」と、篤のグラスに自分のそれを当てる。
 篤は、「この歳で、竹馬の友もでもないが、美香さん、時々飲みましょう?」と、
 美香の方にグラスを向けると、美香は、「はい、おっちゃんで」と、答える。

 「今日は、すっかりご馳走になりました。そろそろ・・・」
  篤が、帰ろうとしていると、美香は、「篤さんのために、私の作ったチーズケーキです」と、
  小さな手提げ袋を渡した。「戴きます。竹馬の友ですから・・・」

 篤は、秋の気配のする、夜道を阿佐ヶ谷駅に向かいながら、美香の胸の感触を思い出していた。
 しかし、秋風と共に、熱い感触から、さわやかなものに変っていた。
 携帯電話を取り出し、妻のメールを読む。篤の夏は終わった。      (終わり)